Episodic ataxia type2の原因と治療について

アルバート・アインシュタイン大学医学部(ニューヨーク)コダッカ教授
2006年3月号のネイチャー・ニューロサイエンス誌に掲載

先日の新潟のシンポジウムで、ニューヨークにあるアルバート・アインシュタイン大学のコダッカ教授の講演を聞き、話す機会がありました。

コダッカ教授は、P/Qタイプ電位依存性Caチャンネル遺伝子の変異で小脳失調となるEpisodic ataxia type2について研究しています。コダッカ教授のモデルマウスを用いた研究から、Episodic ataxia type2は小脳プルキンエ細胞の自発活動の異常が原因であることを報告されました。簡単にいうと、プルキンエ細胞は心臓のように自律リズムをもち、規則正しく活動しているのですが、この規則正しい活動が乱れると小脳失調になるということです。

実際に、モデルマウスのプルキンエ細胞の自発活動は乱れていて、驚くべきことにこれを治す薬があるようです。EBIOという薬で、他の疾患ではすでに使用されています。ただ、飲んでも脳まで到達しないようなので、直接、脳に持続的に注入する必要があります。EBIOを持続注入したモデルマウスは見事に、小脳失調が回復していました。

実際のEpisodic ataxia type2の患者さんでもEBIOが有効であることはまだ証明されていませんが、効果がある可能性があります。ただ小脳に持続注入すること、またその副作用がどの程度かが問題です。

脊髄小脳変性症6型(SCA6)も、P/Qタイプ電位依存性Caチャンネル遺伝子の変異が原因であるため、SCA6の患者さんにもEBIOが有効かもしれません。

平井(2008/09/02)