Greeting

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平成27年4月1日から、本研究室の名称が「神経生理学分野」から「脳神経再生医学分野」に変わりました。これには私が研究をはじめたころのある思いが関係しています。

今から26年前に医師国家試験に合格した私は、病気で苦しむ人を治すという大きな希望をもって神戸大学病院で働き始めました。しかし現実は大きく違っていました。病棟では肺がん、食道がん、悪性リンパ腫など進行したがんの患者がほとんどで、抗がん剤や放射線で治療しても次第に状態が悪くなって行くばかりでした。私が想像していたのとは全く違っていて、難病に対する医学の無力さを痛感しました。そのような日々の中、次第に「現代医学でどうにもならない患者を救うのは研究しかない」と考えるようになり、大学院の2年目から所属していた放射線医学講座の教授にご無理をお願いし、(神経)生理学講座で勉強する機会をいただきました。

なぜ生理学だったのかとよく聞かれるのですが、率直に言いますと大きな意味はありませんでした。研究については全く素人であり、どこでもよかったというのが本当のところです。ただ、当時、私は放射線科で、MRIの撮像法の違いで転移性脳腫瘍の性質(組織型や良性・悪性の鑑別など)を診断する仕事をしており、そのためにはもっと基本的な細胞レベルから脳神経系を勉強する必要があると考えていたためかもしれません。

生理学講座では実験の基本はもちろん、研究ノートの書き方も徹底的に教わりました。研究はやってみると本当に面白く、移った当初は、大学院修了後は臨床に戻る予定でしたが、もっと深く勉強したくなり、博士号取得後、ドイツのマックスプランク脳研究所に留学しました。生理学というのは正常の状態を研究する学問で、10年あまり一心に研究してきましたが、次第に研究の世界に最初に飛び込んだときの「難病の患者様を治す研究をしたい」という気持ちが強くなって来ました。ドイツから帰国後、理化学研究所、米国セントジュード小児研究病院で小脳の生理学研究を行っていましたが、研究者として独立後は、それまでの小脳研究を応用・発展させる形で難病である脊髄小脳変性症の治療法開発を行うことにしました。

2006年に群馬大学の神経生理学分野に教授として異動しましたが、教室名はそのままにしていました。しかし、実際に行っている難病の治療法開発研究と正常の神経機能を研究する「神経生理学」という教室名のずれが、自分の中でも、また外から見ても次第に大きくなって来ました。そのようなことで群馬大学に赴任して10年目となる今年度に「脳神経再生医学分野」と改名しました。

当教室は「脳神経再生医学分野」となり、私が研究をはじめたころの初心に立ち返り、難病の方々を本当に救えるように研究を一層進めて行きたいと考えています。

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